ロボットコラム

失敗しないロボットSIerの選び方[Vol.3]

ロボット導入を成功させる
5つのステップ

Robot Column Vol.3 ― Five Steps to Successful Robot Integration

人手不足を解消したい
生産性を上げたい
省人化を進めたい
ロボットの導入には興味はあるけど、何から始めたらよいのか

そのような悩みを抱えている経営者、工場長様は多いのではないでしょうか。

でも、そんな方でも心配はいりません。
このコラムを読んでいただければ、ロボットシステム導入検討から導入後の運用まで、必要最低限の知識がおわかりいただけます。

ロボット導入を成功させる5つのステップ

ロボットを導入しても「思ったように稼働しない」「現場で使いこなせない」といった声を耳にすることがあります。
その多くは、導入までの準備や設計段階に原因があります。ロボット導入は、単に機械を購入して据え付けるだけでは成功しません。
現場の課題整理から運用まで、一つひとつのステップを確実に踏むことが重要です。
ここでは、導入成功のための5つのステップを詳しく解説します。

ステップ1 導入目的を明確にするDefine the Goal

ロボット導入の出発点は、「なぜ導入するのか」を具体的に定義することです。
人手不足の解消、品質の安定、作業者の安全確保など、目的が明確であればあるほど、最適なシステム構成が見えてきます。
単に“ロボットを導入すること自体”が目的化すると、期待した効果が得られません。
現場の課題を数値で可視化し、「どの作業を」「どれくらい効率化したいのか」を整理しましょう。
この段階で、現場担当者や管理者など関係者全員が課題意識を共有しておくことも大切です。
明確な目的は、SIerとの打ち合わせを円滑にし、導入後の検証基準にもなります。
ロボット導入の成功は、“目的の明確化”に始まり、“目的の実現”で終わるといっても過言ではありません。

ステップ2 情報を集めるInformation Gathering

次に、最新の技術や事例を幅広く調べる段階です。展示会や専門誌、メーカーサイトなどから情報を収集し、自社の課題に近い事例を参考にしましょう。
ロボットの性能はカタログ上の数値だけでは判断できません。対象物の状態や現場環境によって結果が大きく変わるため、実際にデモや見学で動きを確認することが重要です。
また、複数のSIerに相談することで、自社に合う提案スタイルを見極めることができます。
この時点での情報量が多いほど、後の仕様検討がスムーズになります。
技術的な最新動向だけでなく、補助金・助成金などの公的支援制度も調べておくとよいでしょう。
導入は「情報戦」でもあります。正しい知識と比較眼が、失敗を防ぐ第一歩です。

ステップ3 システムを検討するSystem Planning

この段階では、ロボットを単体で考えるのではなく、「ライン全体の流れ」を再設計します。
どの工程を自動化し、どの作業を人が担うか――ここでのバランス設計が生産効率を左右します。
SIerと一緒に、作業順序・搬送ルート・安全装置・制御方法などを検討し、最適なレイアウトを作り込みます。
特に食品や水産分野では、温度・湿度・衛生面などの条件を反映した設計が必要です。また、将来的な拡張性やライン変更も見据え、余裕を持った構成にしておくと後々の負担を減らせます。
システム検討は、“今だけでなく未来を設計する工程”。現場の声と長期的な視点を融合させた検討が成功のカギです。

ステップ4 仕様をまとめるSystem Planning

構想が固まったら、SIerと協力して要求仕様書(要件定義書)を作成します。
ここには、処理対象・作業内容・速度・安全要件・衛生条件・制御方式など、あらゆる要素を明記します。
仕様を曖昧なまま進めると、後工程で「想定と違う」といったトラブルにつながります。
また、試運転時の確認項目(チェックリスト)もこの段階で整理しておくと、立ち上げがスムーズです。
仕様書は、SIer任せではなく発注側も理解し、合意のうえで確定させることが重要です。
明確な仕様があるほど、見積りの妥当性や納期の精度も高まり、結果として信頼性の高いシステムが構築できます。
仕様書は“導入の設計図”。慎重かつ丁寧な作り込みが、成功への近道です。

要求仕様書例

ここでは袋入り菓子の箱詰めを目的にしたシステム導入のための要求仕様書例を記載します。

[各項目の説明]

  • 1何をどうしたいのか

  • 2製品の仕様、特徴、箱・トレーなどのサイズ、入れ形態など

    裸製品か袋製品か、冷凍品か常温品か、具体的特徴(例:衣付き、高粘度のタレ付き等)
    トレー入れの場合:トレーの仕様も記載
    箱詰めの場合:中敷きの有無等も

  • 3毎分当たり、時間当たりの処理量

  • 4自動化を目的とする工程の作業員数

  • 51日当たりの稼働時間、月間稼働日数、年間稼働日数

  • 6有効スペースの把握

  • 7安全面に関する要求

    駆動、摺動機構にカバーを設置すること、自働機・ロボット可動範囲に安全柵を設置すること等

  • 8不安要素、懸念事項がある場合は、小さい事でも確認、相談する

    将来の品種追加に備え、最低10品種は登録可能であること、今後包材の変更があるため事前検証しておくこと、ロボットシステム停止時に下流設備停止のインターロックは入れない等

  • 9導入希望時期

  • 10導入予算

    物理的労働生産性・付加価値労働生産性がどこまで向上するか、人材採用コストや手間、間接的な経費、調達時間などユーザー様の予算基準を作り、設備の導入予算を検討する

ステップ5 運用・教育・保守Operation, Training & Support

導入完了はゴールではなく、スタートです。
安定稼働を維持するためには、運用教育と保守体制の構築が欠かせません。
まず、現場オペレーターに対して操作・安全確認・トラブル対応の教育を行い、チーム全体の理解を深めます。
特に食品・水産業界では、洗浄・衛生管理を含めた教育が不可欠です。
また、定期点検や消耗部品の交換スケジュールを管理し、稼働データを分析することで改善サイクルを回します。
SIerと連携して遠隔モニタリングや定期メンテナンス契約を活用するのも効果的です。
ロボットは“導入して終わり”ではなく、“育てて使いこなす”設備。
運用力が企業の競争力を左右します。継続的な改善こそが、真の自動化成功への道です。

次回予告

安全に継続稼働をするためには、日常点検や定期保守に加え、運用担当者の教育が欠かせません。
「失敗しないロボットSlerの選び方」最終回は、運用・保守・教育についてお話しします。